紫蘇ジュース

 知っている人も、作っている人も多いと思うが、この辺りではこの季節になると紫蘇のジュースが盛んに作られる。赤紫蘇と青紫蘇の葉を材料にクエン酸と砂糖と水があれば出来る。色はワインのようにピンクで鮮やか、味はちょっとすっぱみがありなかなか美味しい。砂糖を多く使用するのが一般的だが、僕は母に頼んで少し甘味を抑えてもらっている。水害を契機に倒した薬局の跡に紫蘇が良く繁る。いくらでも材料はある。母が毎日ペットボトルに数本作って持ってきてくれる。それを漢方相談に来られた人に飲んでいただく。紫蘇は落ちこんだ気持ちを引き上げる、鬱積したものを吹き飛ばす作用がある。あの香ばしさの効用を古代の人は見抜いていたのだ。まさにハーブ効果なのだ。僕は紫蘇が入った処方を良く使う。  僕と親しいある家族にはペットボトルのまま持って帰ってもらう。去年あげた時、とても喜んでくれたので、母も俄然頑張って作ってくれる。今年は、ベトナムの人達にもペットボトルで持って帰ってもらっている。薬局も所詮経済行為なので、こうした金銭を介さない行為はとても楽しい。お金を介さない関係ですべて付き合えたら、どんなに楽しいだろうと思う。この年令になると、もう欲しい物なんかないのだ。買える物で欲しい物は特にない。ちょっとした親切で感謝されること、ちょっとした言葉で感動してくれること、ちょっとした愛で立ち治ってくれること。これらに勝る喜びはない。 せっせ、せっせと紫蘇ジュースを作ってくれる母は、それらを飲んでいる方たちからとても大切にされ、力をいただいている。息子は、毎日こき使っているが、多くの方が優しく話しかけてくれる。ありがたいことだ。