仕事

 貴女がパソコンに向かっている姿を見て、僕は本来の貴女の姿を見たような気がした。日本人がいやがるような仕事を、貴女はやっているのだが、おそらく報酬はかなり低く抑えられているだろう。真剣な顔つきでマウスを操作する貴女は、きっと数年前の優秀な学生に戻っていたのだろう。祖国では超一流の肩書もこの国では通用しないのだろうか。  風習の違い、価値観の違いを力まずに貴女は吐露した。嘗てこの国も貴女が今日吐露した価値観そのものの国だった。ところが黄色人種のこの国の人達は白人になりたがって、米をパンに箸をフォークに持ち替えた。そのお蔭でこの国の人は弱い人に強く、強い人に弱く、他人より自分を、遠回りより近回りを選択するようになった。  貴女は日本語の日誌を見せてくれた。今は外見にお金を使えない、だから髪は友達に切ってもらいそのお金で日本語の教科書を買うと書かれていた。添削の為に毎日日誌を見せてくれるらしい。おそらく貴女は僕より数段知性は上。ただ僕が偶然日本人と言う理由だけであなたに教えている。しかし、確信を持って言えるのは、僕は多くの感動を貴女からもらっていると言うことだ。  いつか貴女が、貴女にふさわしい知性を要求される仕事について欲しい。あふれ出るものがごく当たり前に見えるような仕事について欲しい。