組み合わせ

 僕は高校2年生まで文系を志望していたが、薬局を継ぐ人間がいなかったと言う理由で急遽薬学部を受けることになった。もし進路変更をしていなければ、訪ねてくれた二人の青年のように京大を受験していただろう。(合格するかどうかは別にして)進路変更にも、その後の挫折にも未練はないが、こうした出会いがあると、何もむきになって頑張らなくてもよかったんだと思える。この年齢になると自分の学歴なんかに興味はなくなるし、その無意味さにも気づく。  過疎地の空き家について研究している京大の大学院生2人がある人の紹介でやって来た。今まで借り手について調べていたが、今回は貸し手について調べたいのだそうだ。2時間くらい質問攻めにあったが、果たして役に立てたかどうかは分からない。何せ僕はかなり特異だと思うから、参考にはならないのではないか。僕は借り手の職人か芸術家か分からないような人物の人柄に惚れて「住んでもらった」のだから。よそにも候補地があるというからその場で貸すことを決めた。家賃は要らないし、屋根も南海沖地震のために、軽いスレートに治してあげた。そこまでして牛窓に住んで欲しかったのだ。  質問に答えたり、脱線した会話の中で、さすが京大と言う驚きはなかった。彼らがうまく爪を隠してくれていたのか、あるいはこちらが年相応に知識や経験をつんできたから、偏差値の高さでは驚かなくなったのか、何処にでもいる青年と、どこにでもあるような会話をしただけのことだ。それよりも後輩に当たる方の肩幅が異常に広かったので「何かスポーツをしているの?」と尋ねると水泳をやっていると言っていた。京大、水泳、肩幅、この組み合わせは面白かった。