工場

 中国人らしき寮監先生は「よく勉強して、まじめに働きますから工場でたくさん雇ってください」と僕に言った。彼の職域の範囲なのだろうか、自分の学校の生徒を売り込んできた。  たくさん雇ってあげたいが、なにぶん僕の仕事は一般的ではない。免許商売だから誰でもと言うわけには行かないのだ。能力的には誰でも出来るのだけれど、免許制度がそれを阻んでいる。僕が工場経営者でないことを告げると彼は残念がっていたが、自分でも工場経営者でないことを残念に思った。  僕の住む岡山県固執してやってきた2人がアルバイトを探している。彼らの定番は、コンビに弁当を作っている会社の夜勤だ。いくらもらえるのか知らないが、2時間かけて工場に行くという。電車代が自己負担で、斡旋してくれる人に2万円払うようなことも言っていた。片言の日本語だから真意は分からないが、あこぎなものだと思う。向学心に燃えてやってきている人たちを体よく低賃金で働かせているようなものだ。労働力の輸入だ。  僕が薬局ではなく、町工場のようなものを経営していたら、迷わず彼らを雇うのだけれど、なにぶん薬剤師でなければ意味がないので、返す返す残念だ。「どんな仕事でもいい」と言う彼らに、いい仕事を見つけてあげるのが本当に正解かどうかは分からない。ただ、勉強時間を多くもてるようにはしてあげたい。毎日数時間パチンコ屋に入り浸り、まったく勉強をしなかったかつての不良学生がいえる言葉ではないが。