天秤

 確か今日行われた「晴れの国 和太鼓まつり」のパンフレットは、昨年の晩秋に県北の和太鼓コンサートの時に配られたものだ。ずいぶんと先のことと思っていたが、意外と早くやってきた。忙しく働いているからかもしれないし、積極的にコンサートを探しているからかもしれないが、待ちに待たなくても和太鼓を聴けるから飢餓感が若干薄らいでいるのだろう。  県内の和太鼓集団、名前を知らないのも結構あったが、10団体がそれぞれ15分くらいの持ち時間で腕前を披露した。印象深かったのは「和太鼓 風人」の女性の打ち手が。圧倒的なバチさばきで他を圧倒していた。たった3人の構成だが、他の集団を圧倒して聞き応えがあった。それと「清麻呂太鼓」の若者たち。軽快なお囃子でそれまで硬かった観客を一気にノリノリにさせた。若い打ち手が多かったが、持ち前の身の軽さを生かし、笑いを取っていた。彼らがあの場面で登場しなければ、今日のお客さんは解放されては帰れなかっただろう。  今日は、本来ならかの国の女性を7人連れて行く予定だったが、なにやら昨日会社の旅行で宮島に行ったらしくて、疲れて急遽キャンセルになった。残念とも思ったが、やったとも思った。と言うのは今日のコンサートはかなり混雑するのではないかと予想していたから。県内の10団体のほかに、ゲストとして、エグザイルなどと競演する東京のプロ集団「大元組」が1時間演奏することがわかっていたから。案の定、駐車場はいっぱいで、予備の予備で遠くに確保してくれていたところにやっとの思いで駐車できた。かの国の子達は結構おしゃれで、牛窓の女性では決してはかないようなハイヒールで来たりするものだから、長い距離を歩かせるときに気を使うのだ。そして無料だから席があるとは思えなかったが、これまた予想が当たって、ギュウギュウ詰めの通路に僕は4時間立ちっぱなしで聴いていた。僕は、明日休みだからいいが彼女たちは明日も仕事だから疲れさせることは出来ない。  それにしても今日は久しぶりに一人でコンサート会場にいた。なんとも気が楽で、集中して楽しめた。かの国の子達と行くと、どうしても彼女たちの反応が気になってしまう。旅のガイドさんでもないのに、安全と反響を気にしている僕がいる。  異国の文化を楽しんでもらえる喜びと、純粋に好きな音楽を楽しめないことを天秤にかけて毎回迷っている。