天職

 これは明らかにお母さんの忍耐勝ち。良くお嬢さんを救ってあげたと思う。 起立性調節障害で病院から出される薬は主に昇圧剤や安定剤だ。医師がだらしなさに目をやりすぎると、社会不安障害か何かと勘違いして抗ウツ薬がでたりする。そんな治療がいやで、いやもなにもそもそも効いた気もしないから、漢方薬を求めて来る親子が年に数組いる。その中で印象深く興味を持って見守っている親子がいるが、今日はバスを乗り継いで○○市内を巡回するという計画を友達と立てているらしい。朝お母さんが教えてくれた。以前ならあり得ないことだ。身体がだるくて起きあがっているのも苦痛で、外出もままならなかった子が、友達と人混みへ出かけていくなんて。 このお母さんはとにかく忍耐強くお嬢さんの復活を待った。病院の薬は僕の所に来るようになってすぐ止めた。そしてお嬢さんになにも強要しなかった。お嬢さんが出来る範囲のことで、日常を埋めた。助けることは何でもして、足を引っ張ることは一切しなかった。引け目を感じるかもしれない幼い心をとにかく大切にしてあげたと思う。だからお嬢さんは心まで折れなかったのだと思う。 偶然かもしれないが同じ町から同じような子がやってきた。2週間前からお世話を始めたが、2週間で苦痛が半分に減ったと言った。それはそうだろう、学校にお母さんの車で送ってもらっていたのが、朝起きたときの体が随分楽だから自分で自転車を漕いで通学し、終業まで学校におれるというのだ。そのくらいだから階段を上るのも苦ではなくなったし、 ストレスが随分となくなったらしい。  漢方問屋の専務さんが僕のホームページのお世話をしてくれているが、昨日「先生何か得意分野がないですか?ホームページに書き加えますから」と言ってくれた。考えても得意なものなど無いので「無い」と答えていた。そこでふと思いついたのが今日の二人の「起立性調節障害」だが、なにぶんお世話した人数が少ない。改善率はほぼ100%近いと思うのだが、どうも貧弱で見栄えがしない。100人くらいお世話したら書いてくれても良いが、それまで僕が仕事をしているかどうか分からない。なにぶん早くこの仕事を辞めないと天職である歌手の期間が短くなりすぎる。