お零れ

 80歳に手が届く。腰は二重に折れている。長年の紫外線の暴露で、皺は深い。いまでも現役の農業の稼ぎ手で、軽トラックを運転して薬局にもくる。軽トラックとは言えないが、オートバイでやってくる老人も多い。さすがに長年の重労働で、腰や膝は痛めているが、生涯現役の職業についている分目が輝いている。今日は図書館、明日はスポーツジム、明後日はレストランのバイキングと、日代わりランチで欲望を満たしてくれる都会の老人とは違って、ここの老人は死ぬまで働く。いや働きながら死ぬことを望んでいる。  彼ら彼女らが焼けつく太陽の下で収穫したものをもっと大切に感謝しながら食べて欲しい。最高の健康食品を食べて欲しい。訳もわからぬ業者が訳もわからぬものを混ぜて作ったような健康食品などを信用しないで欲しい。太陽の紫外線による攻撃に耐え得る植物の防御反応の知恵さへ僕らは野菜からいただいている。僕らは所詮自然からのお零れで暮らしている動物なのだ。