脱出

 うれしいメールが今日は二人から入った。どちらもあまり家から外出できなかった人達だ。それぞれ理由は違うが、狭い生活空間から脱出してもらうことの役に立てた。1人は秋に結婚するらしい。結婚は、人生最大の後悔の始まりかもしれないし、幸運の入り口かもしれないから一概に喜ぶことはしないが、結婚が彼女の人生の選択肢に含まれたことが嬉しい。もう1人の女の子も、今までできなかったことが、少しずつ、しかし着実に増えてきている。できたことを嬉しそうに報告してくれる。前者は写真を送ってくれたから、顔を想像しながら薬を作れる。後者は牛窓にも会いに来てくれたから、症状のつかみ方が容易だ。電話や実際に話をし、又メールでやり取りをする中で、傷つき易い優しすぎる心を何度も垣間見た。生きていくうえではハンディーだったのかもしれないが、まるでロボットのように人格を否定され、それでもしがみついて生きていっている人達には、貴女方の存在は救いなのだ。だからこそ求婚されたのだ。雄弁は信用できない。口数少なく、うまく喋れないけれど、彼女らの言葉は言霊になって僕に伝わってきた。二人とも関東であまりにも遠すぎるので、辛い時に訪ねていってあげることは出来ない。しかし、いつも心が帰って来れる場所として、僕や僕の薬局が存在してくれればありがたい。