日曜日

 最初は狸、その次は子猫、3回目は何か分からなかった。早朝、車である所に向かう途中、カラスが沢山道路の真ん中でたむろしていた。カラスは利口だから、車が直前に来るまで逃げない。追い払うように通り過ぎるが、その時にカラス達の朝食が車にひかれて横たわっているのが見えた。 車のエアコンから冷たい空気が吹き出してくる。28℃に設定しているのにひんやりとした空気。まだ車が暖まっていないのだと待っていたが、結局、目的地に着くまで冷たいままだった。車に乗り込む前に覚えた冷気と、車に乗って小1時間走っての温度に差がない。休日だから何もかも許せるような気がして、太陽の力を覚悟して待っていた。  堤防から3,4メートル離れた川面に立って竿をたらしているように見える。数メートルおきに、まるで鵜が休んでいるようだ。満潮だから恐らくかなり深いはずだが、水の上に人が立っている。よく見ると係留する船に渡るために作られた私設の細い小さな桟橋の先端に立って釣りをしているのだ。船は係留されておらず、主のいない間に、特等席を拝借しているのだろう。本来なら水面よりかなり高いところにあるはずの桟橋なのだが、満潮の為水面下になってしまったのだろう。寒い季節に転倒して川に落ちてしまえば命が危ないと思うのだが、その辺りは太公望は割と無頓着だ。 日曜日なのに、多くのバス停で人が待っていた。さすがに通勤の人は少ないのか、一人バスを待っている光景が多かった。その中の一つで、長い髪の女性が背筋を伸ばしまっすぐに前方を眺めていた。寒い朝に背中を丸めることなく、遠くの景色に焦点を合わせているように見えた。結婚を必要と考えない人8割近く。子供を必要としない人5割近く。最早孤独は青春の装飾品ではなく、生き方の一つなのだ。自分のことで精一杯なのではなく、遠く視界が届かぬ所まで旅人のままなのだ。 カーラジオから流れるフランス料理の食べ歩き。コンビニで買ったおにぎり一つ、特別価格で98円。あの先に見える信号までが僕の日曜日。