ありきたり

 去年は過敏性腸症候群の方が7人受験生だったが、今年は一人だけだ。その意味では楽だ。今日その彼からのメールで、合格した事が分かった。まだ他の大学も受験するのかどうか分からないが、まずは一安心。試験中お腹が全く痛くなかったらしい。お腹のことを気にしてはなかなか問題に集中できないだろう。ハンディーなく受験できたことが嬉しい。  彼がお腹を克服しながら、長い受験生活を送って来れたのは家庭の力だと思う。窓口はどこも同じお母さんだったけれど、家族の理解があり、協力があったから長い道のりを走破できたのだと思う。まず高校生までは家庭が協力してくれなければ無理だ。煎じ薬を作って、温かくて消化の良いものを食べて、休みには家族で気晴らしをし、こんなありきたりの日常の中に治る理由が作り出される。何も特別なことをする必要はない。ありきたりに帰れば治る。悲しんだり喜んだり、頑張ったり怠けたり、そんなありきたりの欠如が症状からの脱出を遅らせる。  僕の乏しい星座の知識の中でもさすがにオリオン座くらいは分かる。オリオン座を正面に見ながら、湿度を含んだ温かい師走の風にあたりながらまだ見ぬ青年の幸せを思った。苦しんだ分、報われたときの喜びも倍増だろう。決してマイナス体験ではないと、完治した人達のほとんどが回顧する。僕もそう思う。残念ながら僕の骨格系の弱さと心の弱さが、今となっては特段人の役に立っているような気がする。もしそれらの突出した弱点がなければ、今頃はただの「ジャッジの主役に似ている薬剤師でしかない」・・・違うか!