レジ

 何をそんなに威張っているのだろう。あなたが買った商品をいちいちかごから取り出し、レジを打ちながら値段を唱え、違うかごに入れ替えているのは、ある時はあなたの妹のような世代かもしれないし、ある時はあなたの母親の世代かもしれない。あなたはお金を投げ出し、カードを投げ出し、能面のような顔でレジの前に突っ立っている。不幸にも小学生くらいの子供が2人いて、あなたの態度をずっと見ている。幼いときから日常的に繰り返されている光景ならもう完全に遺伝子の中に組み込まれただろう。感謝を知らず、謙遜を知らず、挨拶も出来ない、あなたと同じように果てしないコンプレックスを、威嚇することでしかぬぐえない臆病な人間に育つだろう。臆病だからよく吠え、その結果共同体から疎外され、恨みと嫉妬に翻弄されるに違いない。  今は若いあなたでも、いずれは老いて体は不自由になり、人の助けなしには過ごせなくなる。誰が助けてくれるのだろう。目も合わせず、礼も言えなかった人を誰が心から助けるのだろう。増殖中のあなたの仲間を一部の善意ある人達が面倒を見てくれるのか。かつて、お金を投げられ、カードを投げられ、屈辱に耐えた人達に助けてもらうとでも言うのか。  この国は、スーパーのレジから、ホームセンターのレジから、ドラッグストアのレジから滅ぶ。