約束

 年齢と共に、どうやら約束と言うものはなかなか出来にくくなる。己の力が分かってくることもあるし、持って生まれた純情がさび付いて枯れてしまったこともある。明日の登校さえ約束する幼い頃の純情は、雑多に詰められたおもちゃ箱と共にもうとっくに捨てた。 そんな郷愁が約束をすることから僕を遠ざけているのではない。そんなきれい事ではない。もっと俗っぽい理由からなのだ。その約束した期日に自分が元気でいる保証がないのだ。あるいはその期日までに約束を果たす気力体力が持続するかどうかはなはだ心許ないのだ。自分の意志とは裏腹に、裏切ってしまうことも十分想定できる。だからせめてもの善意として約束しないのだ。その方が一見冷たく見えるかもしれないが、ことが大きくなればなるほど、又代替えがなければないほど約束は出来難くなる。  そうしてみると政治家などと言う人種は大したものだ。僕みたいな小者とは違う。国家国民を語りながら約束事を連発する。実行するかどうか、出来るかどうか不安で迷っている痕跡なんかはない。果敢に約束事を連発している。小心者には真似が出来ないことだ。 ほんの小さな約束すら躊躇わなければならない小者の僕が、これからもみだりに約束しないことを約束する。