報酬脳と言うものの存在が明らかになったみたいだ。よかった、何をやってもそれを期待して生きてきたから、余程僕は強欲なつまらない人間かと思って、どこかで後ろめたさを捨てきれなかった。そう言ったものがちゃんと誰にも等しく備わっているのなら、まんざら僕だけのことではなくて、大なり小なり誰にでも罪悪感はあるだろう。それも、僕みたいに本能的なところにしかないのかと思っていたら、どうやら芸術や経済活動も深く関わっていると言うから、まんざら卑下することもない。寧ろ、芸術や経済分野で、もっと報酬脳が発達していてくれたら、今頃は花の都で有名になっていたかもしれない。どうも本能的なサルにでもある分野でだけ報酬脳とやらを多く受け継いだらしい。  世に言う草食系男子というのがもしいるとしたら、生きていくのが楽だろうなと思う。報酬脳がほどほどなのだろうから。僕は草食系ではないが青年時代は「装飾系」と「早食系」で苦しんだ。実力が無いうえに努力がいやなタイプだったから、身辺を飾りまくって虚構の中で暮らしていた。こんなに脳なしだと公言して暮らせば楽だったろうに。大人数の中で育ったせいか、まだ時代が豊でなかったせいか知らないが、食べるのは早かった。まるで犬のように噛まずに飲み込んでいたようだ。おかげで若いときから胃が悪くて、いつも青白い顔をしていた。
 報酬脳は僕においては生産より自滅の方に働いたみたいで、人生を精算したらさしずめ報酬NOで終わりそうだ。それでも凄惨よりはいいか。