心は自分に向いたとき鉛のように重たくなり、他者に向いたとき綿のように軽くなる。湖底に引きずり込む力にもなるし、綿にくるんで空を飛ぶ軽さにもなる。重圧に耐えかねて潰れることもあるし、喜びにはじけることもある。もてあまして、どこかに捨ててきたい時もあるし、集めて希望の灯りにしたいときもある。無ければいいと思うこともあるし、無ければ寒々しいことも容易に想像が付く。沈黙が耐えられないときもあるし、沈黙が価値あるときもある。裏表に戸惑うときもあるが、裏表で救われることもある。踏みにじられることもあるし、踏みにじることもある。お金で買えないものもあれば、お金で買えるものもある。  人間のもっとも人間らしいところ。歯がゆくて、頼りなくて、臆病で、哀しくて壊れそうなもの。心、50円で売りませう。