横断歩道

 ・・・夜勤中、職場の患者さんから、「○○さんがいると安心して眠れるよ。」と言われ、涙が出てしまいました。経済的、精神的、肉体的に決して楽ではない仕事ですが、もう少し頑張ろうと思います。今年はケアマネージャーの資格を取ろうと思っています。・・・  田舎の薬剤師に出来ることは少ないが、縁あって元気を取り戻してくれた人達が全国で活躍してくれている。彼も僕にとっては「一人」なのだが、彼がお世話している人達はかなりの数になるだろう。もう今の仕事が5年目と言うから、延べにしたらどれくらいの人のお世話が出来ているのだろう。  時に才能に恵まれてとんでもない肩書きの人を世話することがあるが、僕の薬局では宝くじに当たるほどの確率でしかそんな人はいない。おかげで僕は背伸びすることなく、外見も心の中も普段着のままで仕事が出来る。ただこの普段着がどうも怪しくて、普段着過ぎるという印象を持っている人も多いのかと思うが、仮に僕がピシッと決めて薬局に立てば今頂いている料金では不釣り合いだろう。出来れば誰にも公平に健康を手にして欲しいと思うが、所得が延びない時代、職にありつけない時代にはそれは難しい。草履が革靴に、ジーパンやTシャツがスーツに、岡山弁が東京弁になればなるほど上がるのは付加価値と料金だけ。多くの僕の大切な人が去り、僕の苦手な人達が来る。実力の偽装はしたくないから、せめて容姿も心も無駄を省いて、徹底的に身軽になってほとんどの人が服用できる料金体系を維持したい。  どの様な幾何学的な模様を描いて人は連なっているのか知らないが、必ずどこかで誰かと繋がっている。ごくごく普通の人達が、お互いを責めることなく、小さな善意を往復させて毎日を過ごせたらいいなと思う。決して大きな幸運を願っているのではない。横断歩道の向こう側を走る幸せに、たまにはちょいと声をかけてみたくなるだけなのだ。