応援歌

 ある火事の現場で、屋上に取り残された子供を救いに消防士がやっとの事でたどり着いた。しかし、目と鼻の先までに接近できたのだがそこまでが限界だった。必死の覚悟で登ったのだがそれ以上の接近は出来ない。道路から見ていた人達が一斉に消防士を応援した。なんとかして、頑張ってと。すると消防士は炎の中に飛び込んで無事子供を救出した。インドネシアで実際にあった話だそうだ。  出来ないことまでが出来るようになる「応援」の力を伝える話だ。声に心を載せて伝える行為にどれだけの力があるのだろう。はかることの出来ないものだが、その効果は計り知れないものがあるのだろう。スポーツの応援などはその最たるものかもしれない。何万人もの思いが一つになり、声援に後押しされましたなどと選手もその力を感じ感謝する。 ヒーローやスポーツ選手のように多くの人の応援を、僕ら凡人はもらえないが、それでも凡人だからこそ大切に想い陰ながら応援してくれている人は一人や二人はいるだろう。家族は勿論、親戚の人、級友、先生、職場の先輩。誰も一人で生きてはいない。孤独を気取っていても、大切に思ってくれている人は必ずいる。耳を澄まし、目を開けば、応援歌は誰にも聞こえる。アイマスクをし耳栓をしている限り届かないだけだ。愛は宅急便で送られては来ない。扉を開けて受け入れなくては。行き場を失った応援歌を送り返してはいけない。