挑戦

 あまり買い物をしない性質だから、うまく表現できるかどうか不安だが挑戦してみる。
 僕が牛窓に帰った当初から、薬剤師としていわば育てていただいた方。あまり元気ではない分、大きな病気をしない。倹約型のタイプの方は、大病をするほど体力がないから、細々と永久に生きる。そういった特徴を持った類の代表みたいな方だ。だから毎日どこかが不調で、薬局の簡単な薬ですぐ治る。だからしばしば薬を買いにやって来ては、生きた実験台になってくれた。そういった意味で「育ててくれた人」なのだ。僕より2歳上で、学歴はないが品がある。当時ならありふれた背景の持ち主。
 その方が今日来られて、申し訳なさそうに、「これ使ってもいい?」と言いながら、小さなビニール袋に入った沢山の50円玉をカウンターの上に置いた。当然いいに決まっているがいくらあるのか尋ねると丁度千円だという。20枚と言うことだ。
 なぜそのようなことをしたのか自分で喋ったのが以下の内容。
 最近は多くのショッピングセンターで、会計が機械になっているらしい。だから札を入れてお釣りをもらうだけだから、小銭がどんどんたまるらしい。例えば僕の薬局なら1980円の買い物をして2080円払ったりする人が多い。20円おつり貰うより100円玉1個貰ったほうがさいふの中が軽くて済むのだろう。相手が人間なら阿吽の呼吸で出来るが、機械だったらできないのだろうか。
 自動レジなら人がいるレジへ、切符の自動販売機ならみどりの窓口へ、自動給油機のガソリンスタンドなら、人が入れてくれ、窓ガラスまで吹いてくれるガソリンスタンドへ。時代の進歩に逆らって(本当はついていけずに)対人関係を大切に暮らしているが、着実に包囲網は築かれているように思う。どこまで行ったら、行ってしまったらガラスの対人関係を見直す時代が来るのだろう。

加川良 この世に住む家とてなく - YouTube