世の常


 「(僕の)息子も喜んだでしょう」と言うと、「先生は無理をせず、ゆっくり治しましょうと優しく言ってくださいました」と言うから、なんて悠長なことを言うんだと思った。医者なんてこんなものか。
 僕は逆で、1日でも早く治してあげたかった。だから今回処方を大幅に変えて、控えめでとても優しい女性の肝っ玉を強くしてやろうと思った。今までいわゆるパニックの煎じ薬を処方されていたが、期待した変化が現れなかったので、アプローチの方向を変えてみた。情動を抑えるのではなく、逆に心を強くして不安感を消し去ろうと言うものだ。簡単に言うと原因に蓋をするのではなく、原因を吹き飛ばす胆力を付けるみたいなものだ。
 処方箋を持って来た時から何となく明るく見えた。すこしだけ期待して、「今度の煎じ薬は少しは役に立てた?」と尋ねてみると、一気に以下のような報告をしてくれた。
 職場から運転して帰るのが怖かったけれど、不安感がなぜか減って、怖くなくなってきた。橋を運転して渡れなかったが、吉井川(一級河川)の橋でも大丈夫。近くのスーパーにも行けなかったのに、運転して行っている。ご主人の運転する助手席に乗っていても動悸がしていたのに今は平気。
 僕が「ひょっとしたらバイパスだけでなく、高速道路も運転できるのではないの?1か月後には高速をぶっ飛ばしてやって来たってことになるかもよ」と言うと「私もできるような気がする」ととても良い笑顔で答えて帰って行った。
 パニック障害が生活の質を落とす程度は半端ではない。それどころか自尊心も吹っ飛ばしてしまい、何でもできる人を演じ続けるのはかなり本人にとってはきつい。このま

まいけばその女性もそんな長年の理不尽な日常から脱出できるだろう。
 息子に、精神病薬で抑え込むだけが能ではないと気づいてもらうために紹介した患者さんだが、親の心子知らずは世の常だ。

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