漢方薬の副作用で,最も有名で遭遇しやすいものに,甘草による偽性アルドステロン症がある。甘草は漢方薬エキス製剤の7割に含まれるため,遭遇しやすい。(浮腫,高血圧,低K血症が発症し,低K性ミオパチーと思われる四肢の脱力など)   (抜粋)
 こうした注意書きに触れている方も多く不安感から甘草が入っている処方を敬遠する方はおられる。実際に臓器のトラブルを抱えていて摂取してはいけない方もおられる。こうした事例に対処するのは簡単だ。甘草を抜いて希望の処方を作ればいいのだから。希望は簡単にかなえられるし、僕も処方の選択に何らの制約も加えられない。使いたい処方が使える。候補を最初から狭め、甘草が入っていない漢方薬を探す必要はない。まして候補から外したものに正解が含まれるかもしれない。
 ところが僕でも理解しにくいような難解な説明を患者さんたちにする方々が、同じ相談を受けた時に、何々だったら甘草が入っていないと言う説明をしていた。甘草が入っていようが入っていまいが、それを抜いて作ればいいだけで、最初から入っていないものと言う前提作りがおかしい。
 田舎の不便なところで父が開業して、戦後は薬がなかなか手に入らなかったから、父は薬局製造業と言う、薬局だけにしか作れない薬の製造許可を取っていた。今は製薬会社が綺麗な包装の薬を作ってくれるからそんな免許は必要ないが、それでも煎じ薬を作るとなるとその免許が必要だ。今となっては父が残してくれたものの中で一番ありがたいものだ。
 思えば漢方と言うあまり日の当たらない分野に夢中になり、その中でも理論より実践を重んじる日の当たらない先生を師と仰ぎ、人口数千人と言う日の当たらない僻地で家業を継いだ。それでも仕事はいつも楽しかった。時が僕を取り残してくれたから。

「前川喜平さん」講演 - YouTube