つると言うような単語をほとんど使ったことはない。なんとなく耳に残っていて、その言葉に行きついたが実際には蔦と間違っていた。もちろん「つる」の漢字も知らなかった。インターネットで調べて「蔓」こう書くらしいが、使う機会がないからすぐに忘れてしまいそうだ。
 さてその蔓に会ったのが1週間くらい前。朝中学校で枯草を燃やそうとして、植え込みに熊手を這わした。すると茶色の細いひもが熊手に絡まり動かなくなった。小さな箱を縛るのに使うような紐だが、やたら長い。最初は捨てられた単なる紐だと思ったが、引っ張ってみると片方がびくともしない。そこでひょっとしたらと思ってたどってみると、植え込みに植えられた木から始まり、遠く10メートルくらい先にまで延びていた。不思議だが先の方だけ緑の大きな葉っぱを付けていた。10メートル近くあるが、植物をにおわせるのは先っぽの2メートルくらいなものだろうか。あとは全くただの紐状態だ。
 熊手を使うのに邪魔になるから、引き抜いてやろうと思ったが、これがめっぽう強くて切れなかった。どこを目指して延びていたのかわからないその生命力に感心して、引き抜くことは断念した。熊手を上手に使えばいいことだけだから。
 途中に他の木もあるし街路灯もある。それなのにそれらに目もくれず延び続ける姿に何かの意思を感じた。形状からして、美しくはないが蛇とかミミズとかを想像した。まるでそれらが意志をもって這っているかのような感覚なのだ。
 1週間前に見つけてから、毎朝その蔓を確認するようになった。単なる植物だが、目もくれずにただひたすら延びているその蔓が、結局どこを目指していたか知りたいと思ったから。
 いったい僕は何と重ねているのだろう。

 

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