超高級車

 信号待ちで、前の車の後ろにつけた時に、すぐにその車が並大抵のものでないことが分かった。自ずと距離を保ちたくなる。少しでも傷つければとんでもなく高くつきそうだし、もしかしたらご法度の裏街道を歩く人たちが乗っているかもしれないから。背中に竜や富士山の絵が描いている人たちだったらややこしい。ましてそれがドラえもんの絵だったら、余計ややこしい。
 まず車の幅がある。高さもある。黒色で高級感満載だ。特徴的なのは、後ろのドアが観音開きで、取っ手がそれぞれの扉に縦についている。そしてまた各々の扉に、これまた縦に大きな楕円形のガラスの部分がある。普通の車は後方は1枚のガラスだが、鉄の扉に2つの大きな楕円形の覗き窓があるような感じだ。
 車にはあまり興味がないが、さすがにここまで大きくて重厚な車の種類は何だろうと興味がわいた。そこでバンパーあたりを見てみるとアルファベットで、それも金色で書かれていた・・・のに、結局分からなかった。
 なぜか僕が行く方向に進むから、5分近く後ろをある程度の距離を保って追っかけたことになる。途中信号機が3つあったと思うが、僕といつも同じ直進だった。さすがに超高級車らしく、とても丁寧な運転だと思った。並の高級車みたいに、成り上がり者の「そこのけそこのけ」ではなかった。
 牛窓に帰るために僕はバイパスに上がらなければならない。その超高級車は、バイパスには上がらずに直進した。そこで初めて並走する形になり、横からも眺められた。幅も広かったが、長さもかなりのものだ。大きすぎて不便だろうと、買えない人間は皮肉でも言いたくなる。
 高級感もさるものながら、運転席での背筋を伸ばした姿勢やいでたちも違う。白い手袋をはいていた。
「霊柩車か!」
 学生時代ならその足ですぐにパチンコ屋に向かっただろう。霊柩車に会うとパチンコの玉がよく出ると言い伝えられていて、ワクワクしながらパチンコ屋に急いだものだ。今思えば完全にデマだが、当時は結構縁起を担いだものだ。ただし、実際に球が沢山出たことは一度もない。ただ単に「墓穴を掘っただけだ」
 さすが霊柩車!流れに沿っている。

 

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