赤字

 その理由が分かったときにとても後悔した。同病相憐れむだ。
 問屋さんの車が駐車場に入ってきてからなかなか荷物を持って入ってこなかった。介護用品の問屋さんで、めったに注文することはないから、荷物を持ってきてくれる人がどんな肩書の人かも知らない。僕より少し年上に見えるが、いつも正装していて、配達員には見えない。ひょっとしたら社長さんかも。
 荷物を重そうに両手で抱えて入ってきて、カウンターの上に置こうとしたが、そこはコロナ対策のためのアクリルパーテーションで狭くなっていた。僕は気を利かせて床に置いてくれればいいと伝えた。すると男性は、いかにも腰が悪い人が腰をいたわるような格好でゆっくりと荷物を床に置いた。僕は自分がそうだからすぐに見抜けた。そこで腰が悪いのか尋ねてみると図星だった。
 重いものを床までゆっくりと降ろすのはかなりの負担だ。ギクッとくる可能性さえある。当然彼は腰の負担を心配して平行移動で置けるカウンターを選んだのだ。
 少し狭いけれどそこから落ちるほどの狭さではない。もし腰痛が分かっていたら、当然カウンターの上に置いてもらうが、そこまで気が付かなかった。
 首や腰など骨格系が悪い人は、縦への圧力は一番悪い。重いものを持つのもそうだが、上から押さえつけられるのも悪い。自分の体験で多くを学んできた。辛さも学んだ。
 僕は男性に、自分も同病だと告げ、次回もし体調が悪かったら、外で声をかけてくれるだけでいいと伝えた。大きな荷物は分散して軽くしてから運べばいい。それに若いスタッフも3人いる。
 昔からの薬局に従事していてる人間が、困っている人を目にして手伝わないなんてありえない。田舎の人に育てられた恩は決して忘れない。そして機会があればそのお返しをしていかなければならない。誰かにいただいたものは誰かに返す。こればかりは赤字でもよい。

 

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