共同祈願

 弱い人を苦しめる不正や悪に立ち向かう力をお与えください。主の受難と復活の恵みによって、とるべき行動の光が見いだされますように。
 若かりし頃のスローガンではない。先週のミサで読まれた共同祈願の文章だ。こんな文章が出てくるから不信心者の僕でも洗礼を受けようと思ったのかもしれない。青年期の血気盛んだったころの思いと共通するところが多分にある。政治活動と宗教の違いはあっても目的とするところはかなり近いような気がする。登山ルートがいくつもある高山を登るようなものだ。どのコースを選ぶかはちょっとした偶然の違いくらいしかないのかもしれない。
 他の信者さんたちと同じ文章を声を出して唱えるのだが、思いはそれぞれだろう。世代も国籍も違う。共同で唱える思いに力があれば国の在り方さえ変えられると思うが、なかなかその力は得られない。空しく唱えるだけではないものの、変わらぬ世の現実が暗雲となって行く手を妨げる。もう何度唱えれば、不正や悪が消えるのだろう。特に権力者どもの。


東京五輪 今こそ「勇気ある撤退」を! 私たちは東京五輪と引き換えに何を失うか
ハーバー・ビジネス・オンライン 2021/04/21 08:33
◆勇気を持って五輪から撤退せよ
 菅政権が東京五輪の開催を強行する構えだ。しかし、常識的に考えてコロナ禍での五輪開催は無謀である。世界の感染状況は依然として厳しい。日本国内では聖火ランナーの日程に合わせて緊急事態宣言を解除した結果、わずか数週間で「第四波」に突入、開催都市である東京都をはじめ全国的に感染が拡大し、再び医療崩壊の危機に直面している。
 しかし菅政権のコロナ対策は進んでいない。日本の検査数、ワクチン接種率は相変わらず先進国最低水準。東京五輪には約1万人の医療従事者が必要とされるが、医療逼迫・医療崩壊に拍車をかけるだけだ。
 東京五輪が世界的にコロナ禍を悪化させるリスクもある。東京五輪を機に世界中の新型コロナウイルスが国内に流入し、再び世界に拡散されることになる。その結果、新たな変異種が生まれ、「武漢ウイルス」ならぬ「東京五輪ウイルス」が世界中の人々の命を脅かす恐れがある。
 その他の問題も残ったままだ。安倍前総理が「アンダーコントロール」と嘘をついた原発事故の汚染水は近々海洋放出すると閣議決定
 招致委員会が「温暖で理想的な気候」と嘘をついた五輪の開催期間は、今年も猛暑になるとの予想。
 7300億円で済むはずだった「コンパクト五輪」は1兆6440億円以上の「史上最高額の夏季五輪」に膨張。海外客の断念で数千億~1兆円規模の赤字が見込まれるが、そのツケを支払うのは国民だ。
 五輪開催まで100日を切ったが、コロナ禍は収束せず、選手や国民の安全も確保できていない。菅政権は今こそ「勇気ある撤退」を決断し、毅然と東京五輪を返上すべきだ。
◆米中の火種と化した北京冬季五輪
 しかも、ここに来てさらなる問題が出てきた。北京冬季五輪が米中対立の火種となり、その余波が東京五輪に及ぶ可能性が出てきたのだ。
 アメリカは今年1月、中国が新疆ウイグル自治区で「ジェノサイド」を行っていると断定、3月には米・英・カナダ・EUが中国に制裁を科した。これを機に、米国内では「ジェノサイドを行っている国の五輪に参加すべきではない」というボイコット論が強まっている。
 その中で、米国務省のプライス報道官は4月6日、同盟国・友好国と協議して北京冬季五輪を共同ボイコットする可能性に言及した。その後、バイデン政権は「同盟国とボイコットについて協議したことはない」とプライス発言を修正したが、ボイコット論は依然として燻っている。
 一方、中国は北京冬季五輪を国家の威信をかけた国策と位置づけ、習近平国家主席は「五輪開催は党と国家の一大事であり、国際社会に対する厳かな約束だ」と強調している。来年の秋には5年に1度の党大会が控えているため、北京冬季五輪は絶対に失敗が許されない。
 当然、中国はアメリカのボイコット論に猛反発。4月7日、中国外務省の報道官はジェノサイドを否定した上で、「スポーツを政治化することは五輪憲章に反する」「国際社会は受け入れないだろう」と反論した。同日、習近平はドイツのメルケル首相との電話会談で「双方は来年の中独国交樹立50周年と北京冬季五輪を契機に……交流を推進するべきだ」と強調し、アメリカに同調しないよう牽制した。
東京五輪と引き換えに失うもの
 これまで日中両国は「東京五輪北京冬季五輪の開催相互支持」を確認してきた。中国の王毅外相は4月5日の電話会談でも茂木敏充外相に「中国は東京五輪北京冬季五輪の開催を互いに支持することを願う」とクギを刺したばかりだ。
 だが、アメリカが北京冬季五輪ボイコットの可能性を示したことで、日本は米中の板挟みになった。「日本は北京冬季五輪のボイコットをどうするか」という問題は、そのまま「米中対立の中で日本はどうするか」という問題に直結する。
 これまで日本は米中両国と良好な関係を続けてきたが、菅政権は惰性的に「対米追従・中国敵視」の方向へ流されている。この流れを決定づけかねないのが、4月16日の日米首脳会談である。本稿執筆時には詳細は明らかになっていないが、日米両政府は安全保障、気候変動、経済協力の3分野で日米が連携して中国に対抗する意思を示す共同文書を出す方向で調整を進めているという。
 首脳会談では東京五輪も主なテーマの一つになる。菅首相はバイデンを東京五輪に招待する意向を示しているが、現在の感染状況では五輪開催は非現実的である。そうであれば猶更、菅首相はバイデンから開催支持を取り付けようとするだろう。
 だが、これではアメリカに付け入る隙を与えるだけだ。菅総理東京五輪にこだわればこだわるほど、アメリカに東京五輪を〝人質〟にとられ、無理な要求を突きつけられるリスクが高まる。日本は五輪開催支持と引き換えに、対中制裁への参加や北京冬季五輪の共同ボイコットへの協力を要求されるのではないか。
 日本がアメリカに要求されるがままに対中制裁や共同ボイコットに同調すれば、日中関係は史上最悪の状態に陥り、日本の「対米追従・中国敵視」が決定づけられるだろう。日本は「東京五輪の開催」という菅政権のレガシーと引き換えに、「対米自立の可能性」と「良好な日中関係」という重大な国益を失う。本当にそれでいいのか。
◆内外ともに権力闘争の道具と化した東京五輪
 東京五輪は国内政治・国際政治における権力闘争の道具になっているが、そもそもコロナ禍での東京五輪は非常に困難だ。権力の都合で人々の命を危険に晒す東京五輪が強行されることがあってはならない。東京五輪が米中対立における日本の運命を左右する危険性を考えれば猶更だ。
 菅政権が今なすべきことは「東京五輪の強行」ではなく「勇気ある撤退」、すなわち「東京五輪の返上」だろう。