禍根

 長雨の影響で元気なのは、テニスコートの草。ウォーキングで無断使用している罪滅ぼしに、テニスコートに生えている10本くらいの草を抜いて、「草一本生えていない」状態にしてからまだ1か月は経っていないと思う。それなのにこの長梅雨が続いて見る見るうちに、草だらけになっていった。部活動で利用する日数も少ないし、そもそも生徒が減って過密状態で使われることもない。草にとっては天国だ。今となってはもう抜くなどと言う選択肢はない。ただし、先生の号令一つでたくさんの生徒が草抜きをすれば、1日で「草一本生えていない」状態は可能だと思う。人海戦術って、結構力を持っているから。
 毎朝歩くたびに放置された草が気になっていた。どうして抜かないのだろうと残念に思っていた。と言うのは、手で抜くって原始的だが、意外と種などが落ちずに効果的らしい。だから歯がゆい思いで勢いを増す草たちを毎朝眺めていた。
 ところが数日前に何となく景色が変わっていた。理由は緑のじゅうたんが、茶色のじゅうたんに一変していたからだ。除草剤を撒いて一網打尽状態だ。緑が茶色になっただけで、僕には何ら解決していないように見えた。むしろ除草剤で枯らしてしまったら、根っこまで引き抜くことは出来なくなる。いわば禍根を残した状態なのだ。安易に枯らせてしまえばいいと言う選択肢に興ざめだった。
 そして今日、数本の生き残りを見つけた。なんていう生命力だろう。思わず応援したくなる。僕は一つの価値観で草には対処できないでいる。