別れ

Aさんへ

あなたを神戸の街中で見失ったことが、一番の印象に残っています。日本語が随分と理解できるらしいですが、シャイなあなたは結局お父さんの前で日本
語を使うことはなかったですね。仲間から頭がいいと言われていましたよ。国にお子さんを残してよく働きましたね。恐らくそのお子さんのために一所懸
命だったのでしょうね。お父さんには制服姿の貴女の印象が強いです。3年間よく頑張りましたね。やっとお子さんと一緒に暮らすことができますね。あ
なたの日本での経験もお子さんにとってはよいお土産になります。お子さんを大切に、そしてあなた自身も大切に暮らしてください。
                                                             お父さん
Bさんへ
ある日、偶然 あの広い寮のリビングであなたと2人だけの時間がありました。折角あなたと2人でおれたのに言葉が通じなくて困ったなと思ったときに、
あなたがスマフォを持ってきて、スマフォに向かって喋り始めました。すると日本語に変換され、僕の言葉もベトナム語に変換されることを知りました。
そしてスマフォを通して話すことが出来ました。その時に、僕がどこか遊びに連れて行ってあげようかと提案したときに、あなたは「いいです」と断りまし
た。僕は驚いたのですが、その理由を聞いてうれしくなりました。あなたは日本で沢山働いて、お母さんを楽にして上げたいと言いました。そんな言葉を
今ではなかなか日本では聞けません。あなたは黒い長い髪と同じで、日本にいながらベトナム人の心を持ち続けた人です。そうしたあなたをお父さんは尊敬
しています。そんな人と3年間知り合えたことをとても幸運に思っています。ベトナムに帰っても今までどおり家族を大切にして幸せ一杯で暮らしてくださ
い。
                                                            お父さんより
Cさんへ
あなたの想い出は第二寮で小さな机に向かっている姿です。とても熱心に勉強していましたね。どうせ3年間外国で暮らすのだから、多くのものを知識とし
て持って帰ればいいのに、なかなか皆さん目に見えないものの価値を見出すことが出来ません。あなたはそれをこつこつ実践していましたね。実際に得た知
識もさることながら、その努力こそが大きな宝物になります。人は一生勉強です。ベトナムに帰っても好奇心を持って多くのことに挑戦してください。未来
は開かれていますよ。
                                                             お父さん