整理

 どうでもいいようなことが偶然解決した。処理能力にかなりの不具合が生じている僕だから、どうでもいいことでも未解決のまま残しておくことは精神的によくない。頭の中を出来るだけ整理して荷物を次から次に運び込めるようにしておかないと、トラックが僕の前で荷物を降ろすことを躊躇ってしまう。  ほぼ毎晩、決まった時間にテニスコートを20分くらい周回するが、必ずと言っていいほど飛行機を見る。もっとも夜だから飛行機の灯りだけしか見えないが、微かな音を従えて北のオリーブ園の頂辺りから現れて、南の四国の方に飛んでいく。空に印がないからはっきりとは言えないが、そしてこちらも常に歩いているから、全く同じコースとは言えないが、それでもほとんど同じ直線上を飛んでいるように思える。一体どこからどこに飛んでいく飛行機なのだろうといつも思っていた。未解決のまま頭の隅に置いておくのは結構ストレスだ。でも積極的に解決しようとは思わなかった。  日曜日の夕方、夜を待たずにウォーキングすることにした。勿論僕の馴染みのテニスコートだ。すると歩いている途中に、全く同じコースの上を一機の飛行機が微かな音を残しながら飛び去っていった。この辺りで飛行機を見るなら、せいぜい糸トンボを遠くから眺めているくらいの大きさでしか見ることは出来ない。ところがその日見た飛行機は、カラスくらいに大きく見え、それ故に着陸態勢に入っていることは僕でも分かった。  そうなのだ、正に僕の頭の上を毎晩通過している飛行機は、高松空港に向かっているのだ。フェリーで1時間で渡れる瀬戸内海など飛行機だったら一瞬のうちだろう。だからもう牛窓の上では十分高度を下げ始めていたのだ。夜しか空を見上げることなどないから、小さなあかりだけで飛行機を認識していたが、本当はどれもが大きく見えるべきものだったのだ。  何かの弾みで、夜のウォーキングを夕方に変えた。何の偶然か分からないが、そのおかげでどうでもいいことが一つ解決した。ゴミ箱に整理。