甘党

 3年間毎日、4回から5回くらい下痢をするらしい。それもほとんど午前中に集中する。最初はカレーだが、のちに水になる。出ればすっきりするがやはり、回数が多いから不便だと言う。外の仕事だからトイレが近くにないから、急を要することが多いのだろう。
 ここまでの話ならよくあることだが、下痢の原因を聞いて一気に僕の気持ちが萎えた。何と焼酎の飲みすぎ。酒飲みが自分で飲み過ぎと言うのは珍しい。多くの方が「そんなに飲まない」と言う。しかしそんなに飲まない量は、僕の10年分くらいを1日で飲んでいるのだ。それでも本人は「少したしなむ程度」と言ったりする。
 この男性の量を聞かなかったが、恐らくかなりだろう。かなりの水分を、それも血液の流れを一気によくするようなものを飲むのだから、体は身を守るために、下痢にでもしてその水分を体外に排出する様に働くだろう。僕に言わせれば身を守られている反応で、もしそれを治すのが優先事項なら酒を飲むのをやめればいい。
 酒飲みの特徴で、そう諭しても頭には入らない。都合の良い所だけ取り出して結局は「薬で治して!」だ。正論を言っても、ハイそうですかと言うようなタイプではないから、漢方薬を作ることにした。こういった人間でときに、現代薬を嫌う人がいるが、できれば煎じ薬で作ってとまで言う。大酒のみが自然派志向なのだから、こちらの頭も酩酊状態だ。
 1週間分、「酒飲みのための下痢止め」を作って渡した。3日目の今日電話がかかってきて、下痢はかなり良くなったけれど「あの味はどねんかならんの(どうにかなりませんか)?」と言われた。「はちみつを混ぜて甘くして飲んだら?」と提案すると「はちみつか、混ぜていんですか(いいのですか)?良かったあ~」と喜んでいた。甘党か!