逆走

 今ある製薬会社から報告書が届いた。
 1か月くらい前に、販売した健康食品の中に一つだけ空のカプセルが混ざったものを見つけて服用者が持って来た。EPAなどが充填されているもので本来なら濃い茶色をしているが、それは薄い茶色で中まで見通せる。何も入っていないのはそれで分かった。一つだけ薄い色のが混ざっているのだから誰でも発見できる。僕の薬局を30年以上利用してくれている人だからこんなこともあるんだと、なんだかおもしろい経験をしたように笑っていた。
 その後セールスの人が定期訪問でやって来た時に、回収してもらった。製薬会社だからその手の問題には神経質ですぐに原因を調べてくれたみたいだ。
 その結果がなんと、カプセルの大きさが異なると言うのだ。内容物の重点ミスではなく、そもそも関係ないカプセルらしい。内容物は検出できないくらいの量で、ほとんど空だったのだろう。他のカプセルが何かの理由で混ざったとしか考えられないと言う答えだった。
 製薬会社は責任を回避するような文章ではなく、原因を突き止められなかったことをわびていた。ただカプセルを作っている会社は、従業員は工場内に物を持ち込むことは禁止にしているので工場のミスとは考えられないと製薬会社に報告している。ただし、カプセルを作っている会社だから色々な大きさのものを注文に応じて作っていると思うのだが。内容物がないカプセルなどどこにでもあるものではない。
 僕もその女性も、結構こうしたことに遭遇したことを面白がったので、カプセルの製造工場も「不思議不思議」と驚くくらいでよかったのに。実害など全くないのだから、ギャグにしてもよかったのに。
 硬軟織り交ぜてどちらに傾くかそれぞれの個性だろうが、僕は出来れば軟に傾きたいと思う。時代はその道を逆走しているから。