外見

 昨日尾道から帰ってきて、一呼吸置いてから仕事にとりかかったのだが、相談机の僕の腰掛が替わっていた。
 僕が使い続けていた椅子のレザーのクッションが破れ始めていて、日を追うごとにみすぼらしくなったのを娘が見かねて新しいのを買ってくれた。どんなのがいいかと問われたので腰を守るようなのがいいとリクエストしておいた。
 新しいのはひじ掛けもついているし、背もたれの部分がゴムか何か伸びるような素材でできていて、腰や背中にいいらしい。ただし、能書きはどうでもいえるから使ってみなければ実際の効果は分からない。8万円の椅子と言うから大いに期待したが、確かに大きく後ろに体を倒して背伸びするにはいいと思うが、肝腎の腰に対しては余計負荷がかかるような気がする。背筋を伸ばしてパソコンポ前に腰掛ければ、骨格系に負担はかかりにくいと思うが、その椅子は直立不動には向かない。実際にその椅子でパソコン作業をすると腰が痛くなった。
 せっかく僕の身体を考慮して選んでくれたのだから文句を言わずに大切に使おうと思うが、慣れない椅子に腰椎が緊張を増したので、そんなことは言っておれない。今日休みなのに仕事をしに来た娘に事情を話して調節してもらった。
 一連の出来事から推察するに、その椅子に8万円分の価値はないと思う。僕自身はみすぼらしさなど一向に気にならないから、その椅子でよかったのだが、キレイ好きと言うか汚いものが嫌いな娘にとっては耐えれなかったのだろう。
 外見を飾らない。大学生活で得た価値ある習慣。とにかく楽。この快適さを誰にも邪魔されたくない。