提言

 さすがに「牛窓クルージング&ちょっぴりスナメリウォッチング」のタイトルはもう使えないかも。使わない方がいいかも。2週続けて乗ってみたが、一瞬でもスナメリの姿を見ることができなかった。僕は牛窓の人間だから、そんなに遭遇できるものではないことは分かっているが、タイトルにつられて来た人はやはり見たかっただろう。船を止めて回りの海を凝視する時間が、それぞれ10分くらいずつスポットとみなされている2つの海域であるのだが、波頭に淡い期待を寄せてはがっかりする時間に変わってしまっている。
 主催者の前島フェリー側もよく分かっているから「ちょっぴり」なんて言葉を避難場所がてらに使っているが、スナメリを餌にする必要はないと思う。むしろ牛窓7島めぐりとか、海から見る牛窓とか、ありのままでいいと思う。その過程で幸運にも遭遇したら、船長が知らせればいいと思う。
 僕が興味を持ったのは、まず牛窓港から東に向かった時に、遠く播磨灘あたりが見えること。そちら方向には島がないから、はるか向こうの街を想像してしまう。この海はどこまで続くのだろうと想像を掻き立てられるのだ。同行したベトナム人がスマフォで「大海」を表示し、この海は大海ですかと尋ねた。そう東の方向に向かっている間は、そうも思えるのだ。
 次は前島の裏に回った時。なんだ、島が二つも隠れていたのかと言う発見。本土から見たらまったく前島で隠れてしまうから、島は新たな発見になる。前島と近いからまるで海峡のようになって、両側の島の間を船が行くような形になり面白い。そして島のほとんどの場所が急峻な崖で海と接しているから、どうして人が農業を発達させれたのか不思議な感覚になる。前島で作られる野菜は定評があるが、その昔、開墾に多くの情熱が注がれたのだと思う。
 そして最後は、あの小豆島が巨大な島に、そして香川県だとは思えないくらい近くに見えること。何十年ぶりに訪ねてみたいと誘惑にかられるほど、存在感がある。そのバックには多くの香川県の島が見え、濃淡を作って、距離を教えてくれる。
 部外者だが、海もフェリーも大好き人間だから、いつかチャンスがあったら提言したいと思っている。