不意打

 マイナーでもメジャーなのだろう。高山に住んでいる僕の先輩を知っている人がなんと2組僕の薬局に来る。
 その中の一人は見るからに汚い。40数年前の僕と同じだ。彼はその当時のスタイルをそのまま貫いている。彫金か何かを生業にしているが、そのほとんどは各地で行われるイベントへの出店だ。そのことは知っていたが次の言葉はほとんど不意打ちだった。「今アルバイトをしているから腰が痛い。コロナの事業持続化給付金?を申請している。あれがないとやっていけない」
 こんなに近くにコロナで「やっていけない人」がいるとは思わなかった。ただ考えてみれば彼も芸術家の一人。展示会や即売会などが軒並み中止で、商売の機会が皆無だ。収入が絶たれれば仕方なくアルバイトに出る。
 色々話しているうちに、彼が「インターネットをしなければならないだろうね」と言った。見るから苦手そうだが、僕より20年遅れている。僕もかなりの機械音痴だが、完全に負けた。しなければならないと、したら商売になるは彼の中ではかなり近いのだろうが、そんなに甘くはない。彼がどのようなものを作っているのか見たことはないが、おそらく日本中に同じような作家はたくさんいるに違いない。「ホームページを作るんだったら素人が作る粗末なものだったら意味ないよ」と助言したが「今まで通りの泥臭い人間関係のままで行ったら」と同義語だってことに気が付いてくれただろうか。「マスクをしてお客さんと話したくない」と言う彼にいまさらインターネットは似合わない。