物語

 確か「仁」の原作はマンガだと聞いたが、何にしろ物語を作る人ってのは大したものだ。今日も昼に3時間見続けたが、何度涙を流しただろう。
 作者は何を言いたかったのだろう。僕には善人をとことん突き詰めているように思った。仁先生もしかり、咲様もしかり、坂本龍馬もしかり、野風もしかり。
 創作でしか存在しえないような人物が見入ってしまうと創作ではなくなる。あたかも実在するかのような錯覚のもとで、自身と比べて人生そのものの評価を自分で落としてしまう。どれだけの才能をもって生まれたのか、いやいや逆にどれほどの才能も与えられなくて生まれたのかと嘆いてしまうが、ほとんどの人は凡人そのもの。創作の人物の足元にも及ばない。やり直せられるならこうありたいものだと、科学をいとも簡単に通り越してしまう。それができるのがいわゆる物語なのだろう。
 マンガと言うものをほとんど読まない僕だから、まさかマンガ(の作者)にこれほどまで感銘を受け影響されるとは思わなかったが、作者の多いなる意図にかくも簡単に乗せられてしまった。漫画とアニメの違いについて僕は知らないが、来日する若者の中にかなりこれ目当てがいることをテレビで知った。その目的にあきれていたが、人生を左右するような作品も多いのだろう。
 当然と言えば当然だが、人生で巡り合うものは世代で結構異なる。若かったころの手あたり次第がいとも簡単に老年期の偶然に敗れる。老いにもなかなか味があるが、老いが時として恐怖に変わるのは、老いの先にはもう何もないからだ。