衝撃的

 思わず聞き返した「ご本人がそう言われたの?」と。
 何故ならもう100才が近いはずだから、本人が御自分でそう言われた事が俄かには信じがたかったのだ。お世話をしている人が当然気を使ってそう言ったのだと思った。
 この方はもう10数年、あるサプリを飲んでいる。僕の薬局でのサプリはとても珍しいのだが、発売当時は医薬品の許可を得るほどその会社に財力がなかったから当分健康食品で売られていた。僕らは血管系を守るものとして重宝していたし、痴呆に効果があることも大学の大規模調査で明らかになっていた。そこで珍しく僕もサプリメントを採用したのだけれど、時代の要求もあって医薬品の許可が出て今では病院でも使われている。
 当時から高齢と言うのが頭にあったが、お嬢さんがそのサプリをとりに来るたびに、「もう何歳?」「今でも元気いっぱい」などの会話が繰り返されるだけだった。それこそどこも不調がないのだ。健康で長生きを地で行っているようなものだ。
 昨日も全くその短い会話が繰り返されるだけなはずだったのだが、本人が「薬が無くなりそうだから買ってきて」と言われたらしいことが衝撃的だった。よくあるのは、親の容態を心配して子供が飲ませるパターンだが、100が来たかもしれない人が自分で薬を管理していることが信じられなかった。もうここまで来ると感動ものだ。不思議だったのか、感動が激しかったのか数回聞き返したと思う。丁度100才で、来月101歳になるらしいが、さすがに足腰は衰えているけれどそれ以外は悪くなく、病院の薬も飲んでいないらしい。もっとも100歳まで頭も元気な人に、何の薬が必要だろう。世話をする医者や医療従事者などよりよほど元気で理にかなった生活をしてきているはずだから。むしろ無用な介入が傷つけてしまいそうだ。
 僕が勧めたサプリが功を奏したのか、本来の生命力かなど問題ではない。目の当たりにした事実がいかにも衝撃的だったのだ。それが、ほんの小さなドラマでも。