縮図

 昨夜、ニュースを見ようとしてテレビをつけたら、NHKのプロフェッショナル?と言うような番組をやっていた。途中から見たわけだが、その冒頭「幼い時から人間関係を築くのが苦手」と言うナレーションが耳に入った。この手の悩みを多く相談されるので、すぐに興味が湧き画面に見入った。取材を受けているのは珍獣を専門にする獣医師だった。畜産は別として、普通は犬や猫などを主流に営業するのだろうが、この獣医は珍獣専門だ。蛇や兎やカメレオン、家畜以外なら何でも診る。幼い時からそうした動物が友達だったみたいだ。
 志や現実の壁など、当然面白おかしく演出されているのだが、彼が言った一言がすごく耳に残った。なるほどなあと感心した。それはペットを通してわれわれ人間に宿命を教え、又それが救いになるものだった。
「動物の命は、われわれ人間にとっては縮図なのです」短い歳月のうちに誕生から成長、老いから死への過程をすべて見ることができるからだろう。老いを忌み嫌い、死を恐れることの不条理さを戒める言葉として発せられたのではなく、気負いのない、何気なく発せられたものだ。その何気ない言葉を僕はキャッチしていた。爬虫類などと遭遇すると後ずさりしてしまう僕が、自然の中で懸命に命をつなぐ生きもの達を愛する人の言葉に気付きを与えられるのだから不思議なものだ。いやいや真反対だから、何気ない言葉を拾うことが出来たのだろうか。「誕生したら必ず死ぬのが当たり前ですから」なるほど、その当たり前のことに抗うとしたらこれは相当苦しいだろう。抗わなければならないほどに、失うもことが怖いほどに持たなければよい。・