強制

 見ているだけで気持ち悪い。首の辺りがぞぞっとして鳥肌が立つ。冬でこうなのだから夏だとこの数倍気持ち悪い。
 食事中に目に入ったテレビのコマーシャルで、綺麗に洗ったワイシャツにネクタイを結んでいる光景が写った。これが僕には耐えられないくらい気持ち悪い光景なのだ。自分がその動作をするときを想像して、それは数年に一度くらいなことだが、不愉快さは極限だ。汚部の顔をテレビで偶然見てしまったきくらい気持ち悪い。
 とにかく僕は締め付けられることが嫌いだ。衣服が当たることも好きではない。だから襟のある服全般、腕時計、マフラーなどをことごとく避ける。ネックレスなどもうこれは蕁麻疹ものだ。勿論したこともないし、しようとも思わない。想像しただけでだめなのだ。
 心が締め付けられるのもいやだが、結局病院や企業に就職しなかったのは、制服の気持ち悪さを避けたこともある。スーツだめ、綺麗過ぎる白衣だめ。Tシャツにジーパンで出来る仕事を無意識に探していたのかもしれない。要は学生時代の延長の姿や気持ちでしか働けなかったのだ。運よく流れ流れて、そのままで出来る仕事に行き着き、その仕事を全うしつつある。自分らしいところに固執し、自分を守れたのだと思う。
 綺麗を強制する企業のコマーシャルに乗せられて無駄な金を貢ぐ必要はない。自由に暮らせば無駄なお金など使う必要がない。僕はもっともっと物を少なくしたい。