指笛

 毎晩、ユーチューブでエイサーを見てからでないと寝なくなってどのくらい経つだろう。恐らく、もう半年以上繰り返している夜の儀式だ。いまさら太鼓を練習することはできないが、指笛ならできるのではないかと思って、それこそユーチューブで指笛の吹き方をいくつか見て真似てみた。僕は和太鼓のコンサートでは指笛もどきで、応援をするのだが、エイサーの指笛は、とにかく音が高い。僕のと1オクターブくらいは違うような気がする。だから沢山の太鼓の音に負けることなく響き渡る。嘘か本当か知らないが、数キロ先でも聞こえると豪語している人もいた。確かにあの高音だと遠くまで聞こえるかもしれない。
 昔ならわざわざ沖縄まで行って、名人に頼まなければならないが、今は簡単にユーチューブで我が家で練習できる。機械音痴の僕でも、現代技術の恩恵はいっぱい受けていて感謝しなければならない。幾人かの指笛の動画を見たが、微妙に吹き方が違う。ただし、理屈はよく分かった。普通の笛や楽器と同じで、狭いところを空気が通れば音が鳴るのだ。この理屈は結構シンプルだが押さえておかなければならない点だと思う。
 それぞれ名人達は、練習すれば簡単に吹けるというが、何事も同じでそんなに簡単ではない。ちょっと練習すると脳の酸素が不足するのか失神しそうになるから、数分が限度だ。沖縄の人みたいに、エイサーのリズムに合わせてまるで楽器のように指笛を鳴らしてみたいが、音すらでないのが1ヵ月後の自分だ、
 ところが今朝何気なくやってみたら、今までの自分の指笛とは全く異なる高音が出た。それも何回も連続で。まさに沖縄の音だ。偶然出たのかと思い、何度か再現してみたが5割の確率くらいで音が出る。「何気なく」と言うのが、意外と力が抜けていてよかったのかと、自分で結論付けたが、むきになって練習しても出なかった音がいとも簡単に出てしまった。
 毎日多くの過敏性腸症候群の方を始め病気の方に「力を抜く」ように指導しているが、色々なことにそれは役立つと思う。力んでやって力が発揮できることなど無い。古来狩の時くらいしか使わなかった神経を、現代人は四六時中使っている。それで健康でおれる程、現代人は強くはない。