安定剤

 電話の向こうの声が震えている。50歳を過ぎた女性だが、まるで10代の女性のように怯えている。僕に電話するだけでこのように緊張するのだから、その他の日常生活の質の低さが思い浮かぶ。実際に外出もままらないみたいだ。
 半年前に不安感を主訴に僕のところに漢方相談にやってきている。2週間分薬を作ったのにまだ残っていると言う。その理由は煎じ薬を作るのが面倒だったと言うから、そこのところだけはどうも繊細でないらしい。頑張って飲んでいたらここまでひどくはならないだろうと思うが、こういったケースは間々あるから僕も慣れているといえば慣れている。あまりに今の症状が悪化してしまったので又漢方薬を飲むらしいが、その理由が気の毒だ。と言うのは何年も飲んでいた安定剤2種類を、医者が処方してくれなくなったらしいのだ。彼女だけでなく、最近多くの方が10年も20年も飲んでいたデパスを医者が処方してくれなくて困っている。彼女も今日僕に教えてくれたように「一生飲んでも安全な薬」と説明されて飲み始めたのに、手のひらを返したように、飲んでは不都合が起こると言い始めたのだ。国が安易に処方しないようにと通達を出したと説明を受けているが、元々アメリカに持ち込み禁止薬を何十年も野放しにしていた国も悪い。彼女の主治医は最近なんと言っているかと言うと「止める気がないから止めれないんだ」そうだ。手のひらを返すだけならいいが、ほとんど患者を恫喝している。たまったものでないからその女性はパニックが再発して、外出も出来ないでいる。家の中で電話するだけで声が震え息苦しくなる。今回のパニックは患者が自分で作った症状ではない。明らかに医療者側の勝手が原因だ。安定剤を止めれないくらいの中毒患者を作れば商売大繁盛で、その人が生きている間上お得意になる。治したら患者は来ないが、薬から離れられないようにすれば永遠に通ってくる。製薬会社と医療機関の画策にうまくはめられた患者がこの国にはあふれている。医療保険でもらえる薬(ヤク)まがいだ。患者はもっともっと「治してほしい」と訴えるべきだ。