頭上の星

 ツバメにプレッシャーを与えても何も解決しないが、この至れり尽くせりの待遇には、何らかの気持で返してもらいたいものだ。
 この時期になると、我が家の僕以外は、ツバメの赤ちゃんが無事巣立ってくれるように、ありとあらゆる工夫をして、カラスから守ってやる。何度かカラスにやられた経験から、カラスを上回る知恵で対処して、この数年は全勝だ。卵や雛が無残にもカラスの餌食になることはなくなった。2階に上がる外階段は全てツバメに開放して、糞でいっぱいだが、それも上手にさばけるようになった。軒下の巣は、カラスの頭脳を逆手にとって、シンプルだが近寄ることもはばかるくらい効果的な方法を編み出した。
 一つの巣の雛がかえり、今日巣立って行ったが、家族が喜んでいる。家族と言うより職業集団の趣の我が家で、数少ない共通のテーマだ。ツバメがもたらしてくれた幸せなのだろうか。幸運を運んでくれると信じられているが、僕としてはもう少し色をつけてもらいたいのだが、残念ながら例年この程度のもので、それ以上の運を運んでもらったことはない。
 中島みゆきはツバメに地上の輝く星が見えるかと歌ったが、凡人の僕は、ツバメよ地上であえぐ僕に頭上で光る希望の星を恵んでと歌いたいところだ。希望の星に僕がなるのではなく、希望の星をくださいと歌いたい。これが人格の差かな。でも、汚部よりは遥かに綺麗だろう。