間借り

 このところの僕の一日の終わり方は、ユーチューブでエイサーの太鼓の音を聴いてから眠ることだ。エイサーは踊のようでもあるから、正確に言うと「見てから」と言うことになる。いつからだろうエイサーに興味を持ったのは。あの足を横に開く動作がとても滑稽で、ぐんぐん興味をそそられた。本土の太鼓は、太鼓が作る音楽だが、エイサーは曲に間借りするように演じられる。恐らく琉球王朝の頃からあったものが、ビギンの音楽に乗ったりするからこれまたよい意味で滑稽だ。優柔不断とも言える。
 若者が、合いの手を叫んで、足を横に開きながら、懸命に踊る姿は「楽しい」。エイサーを一言で表現するのに、どの言葉がふさわしいかしばし考えたが「楽しい」でいいのではと思う。見ていてとても楽しいのだ。僕の背後からパソコンの画面を覗いていた妻が、「沖縄に行って実際に聴きたいね」と言った。これはとても珍しいことだ。何を提案しても、教会行事以外ことごとく拒否されるのに、エイサーだけは積極的な評価だった。太鼓に興味がない人でも「楽しそう」に見えたのだろう。
 太鼓ひとつで沖縄の印象を語ることはできないが、戦争で殺され、戦後アメリカの植民地になり、土地を奪われ海を奪われ、自尊心を奪われている人たちを見ると、この国から別れたらいいのにと思う。あの独特の文化まで失わないために。