水戸黄門

 長年の水戸黄門ファンにとって、あれほどの屈辱はなかった。例えで言うなら、史上最大の嘘つきのアホノミクスを日本の掃除大臣にしているくらいの屈辱だ。
 もう、「再」を何回重ねればいいのだろうというくらい昔からのファンにとって、武田鉄矢水戸黄門を見せられるくらいなら、午後3時がなくてもいい。
 僕は今まで一度も武田鉄矢水戸黄門を見たことがなかったのだけれど、シリーズが入れ替わったときに「見てしまった」それはそれはもう、何十年の感動を一瞬にして打ち消すほど水戸黄門の番組の質を落としてしまった。例のネチャネチャしたしゃべり方が光圀像にはまったくあわなくて、気持ち悪いくらいだった。いやそれを通り越して、最早怒りの状態だった。
 午後3時台に運よく?食事を摂ることができれば、15分くらいは後ろめたさなく水戸黄門を見ることができる。その習慣でその時間に食卓に腰掛けるとTBSにチャンネルを合わせてしまう。といった理由で2度、見たくない水戸黄門を見てしまったが、その後は敢えてチャンネルをそこに合わせなかった。ところが数日前に何気なくそのチャンネルに手が行った。そこに現れたのは、いやいや現れてくださったのは、もう何度もみている西村?という俳優が演じる光圀だった。これはさすがに見ていて気持ちよい。演技がうまいのか、見るからにそうなのかは分からないが、安心して見ておられる。
 元々武田鉄矢水戸黄門をいつごろ、どのくらいの期間放映したのか知らない。そもそもそんな水戸黄門があることすら知らなかった。リアルタイムで放映したときにも恐らくかなり不評だったのではないか。だから元々製作した本数が限られていたのか、再放送でコアなファン層から不満が噴出したのだろう。
 これでまた昼食を全うな時間に摂れないくらい一所懸命に働いて、3時50分に賭ける。「この紋所が目に入らぬか」と悪人を成敗する瞬間に溜飲を下げ涙を流す。悪代官や疫人を現代の政治屋や悪疫人に当てはめて空しさを解き放つ。