擬似体験

 関西から相談に来たある家族のお嬢さんが、我が家に一人泊まったのは今から何年前だろう。当時小学生だったが、久々に目の前に現れたその子はこの春、ある音楽学校に入ると言う。面影は辛うじてあるが、道で会っても気がつくはずがないくらい変わっている。当時機関銃のように子供とは思えない言葉を駆使して僕を楽しませてくれた子は、今はずいぶんと落ち着いて、素敵な女性になっている。こんな子がいれば、ご両親も幸せを分けてもらえるのではないか。なんだか久しぶりに会う孫のような疑似体験をさせてもらった。
 僕は職業柄か地域性か分からないが、このような擬似家族体験をさせてもらうことが多い。多くはベトナム人女性たちの擬似親子だが、今日のように擬似孫もいいものだ。家族と言うより職業集団の趣が勝っている僕の家庭では味わえない気持ちを味わうことができる。近い将来、彼女がテイクファイブでも聞かせてくれればうれしい。