麻酔

 麻酔のために使った薬のせいでこの時間帯になっても脈が速く、結構息苦しい。脈が速くて困っている人のつらそうなメールをもらったことがあるが、今ならもっとその人に寄り添うことができたと思う。薬剤師的な発想で処方は思い浮かぶが、どれだけ身にしみたかは恥ずかしいくらいだ。
 さて、全身麻酔も2度目だと慣れたもので、今度こそは眠りに落ちる瞬間を感じ取ってやろうと身構えていたが、何か眠くなった瞬間にはすでに意識を失っていた。こんなに麻酔が簡単に眠りにつけるならぜひ永遠に覚めさせないでと本気で思う。何分眠っているのか知らないが、死んでいたのとおそらくなんら変わらないだろう。あんなに楽に永遠の眠りにつけるなら、選択肢に入れない手はない。
 今年の1月に見つかった腫瘍が大きさを変えていないから、このまま様子見かと思ったら、医師が細胞検査をしてみましょうかと提案してきた。変化していないけれど白黒をはっきりさせないと、これから先ずっとこのような検査を繰り返すのだろう。僕は擬似の死の体験だから苦痛ではないが、医師がせっかく言ってくれるのだからその提案を受け入れた。12月の11日と12日は入院だからどうぞ漢方薬の注文は控えてほしい。今日も午前11時に牛窓を出たのだが、娘夫婦はてんてこ舞いだったらしい。朝の6時から11時まで僕は注文の漢方薬を一応全部作って出かけたのだが、11時以降のは二人が作ってくれた。病院や施設の薬を作りながらだから大変だったと思う。
 12月の検査で手術にでもなったら、そのときが僕の引退時期だ。治らない病気にならない限り僕に引退はない。正々堂々と辞めれるのは唯一その理由だけだ。抗うことはしない。明日が今日より良くならないなら、明日はいらない。長々と繰り返すその状態こそ僕には地獄だから。