紅葉

 もう何回も訪れているのに、そしてその道案内ももう何回も見ているはずなのに、いまだ足を踏み入れたことはなかった。もっとも、僕が訪れるのは必ず広島で勉強会があるときで、午前中にかの国の女性達を案内して、昼過ぎには広島に戻って漢方の勉強会に出席するのがパターンだったから時間の余裕はない。だから自ずと代表的なところを簡単に回るだけだったが、今回は明らかに、ゆっくりと回ることを前提に訪れた。
 その看板に誘導されたのではなくロープーウェイに乗ろうとしたのだ。ところがロープーウェイに乗るために少し登り勾配の道を上がっていかなければならなかった。ところがその道が綺麗だったのだ、下に小川が流れ、まだ緑だけれどもみじの葉っぱが生い茂っている。これがもう一月後だったらどれだけ綺麗だろうと思わせるほどだ。宮島の紅葉は有名だけれど納得できるような気がした。
 帰国する人たちに思い出を作ってあげるという、勝手に作ったルールだが、それによって得られることは多い。