感情

 僕はかの国の女性達をどこかに連れて行くと、後々のために印象を尋ねることにしている。勿論帰ってから通訳を介してだからタイム差はあるが、時に現場で彼女達を観察しての印象と通訳を介しての感想とは異なることがある。
 今回のフェリーでの高松行きもその一つだったみたいだ。4人連れて行った中の一人が「実は怖かった」と言った。何が怖かったというと「船が古かった」ところらしい。これには正直驚いた。漁船レベルの船を含めて船に乗ったことがないから、これでどうだというくらいの自信があったのだが、船の何処を見てそう思ったのか「こわい」まま1時間船上にいたことになる。4人で写真をとりまくりだったのに、怖かったのだ。もっともかの国の女性はほとんど泳ぐことができないからわからないでもないが、あちこちに露出したさびなどを見ての感想だったのだろうか。
 そして恐らくその考えに止めを刺したのは、高松港で隣に停泊していた豪華客船を見たからだろう。もうほとんどホテルを積んでいるような船だったが、僕でも驚きと羨望の眼で見ていたのだから、彼女達はなおさらだ。無邪気に写真とりまくりの中に秘められた感情に、大いに興味を持った。