えと

 3ヶ月の実習生でやってきている女性に歳を聞かれたので答えると、国にいるお父さんと同じだという。彼女が父親が蛇年だというので僕もそうだと言うが、僕はうさぎ年だ。彼女は怪訝な顔をして蛇だ蛇だと訴えるが、うさぎだから答えようがない。そこで通訳が日本のえとの数え方を尋ねて来た。ね、うし とら う たつ み までは言えたのだが、そこから先は知らない。行き詰ったところで通訳の質問に救われた。「2番目のうしは日本とは違いますよ。水?水?」と悩んでいたので「水牛か?」と尋ねたら「そうそう」と僕を指差して助け舟を素直に受け入れてくれた。牛と水牛だから同じようなものだと、僕は無関心だったが、彼女にはこだわりはあったようだ。これで終りならよかったのだが、さっきのえとの尻切れを彼女が許すわけがなく「オトウサン みの後は何ですか?」と尋ねてきた。こういったのは最初からのリズムが大切だから、再び「ね」から始めた。リズムに乗って言えば何でもよく出てくるものだ。そこで僕はテンポよく唱え始め、やはり最後まで言い切れた。恐らく頭で覚えるのではなくまるで歌のように覚えればいいのだ。今でもはっきりと唱えることが出来る。「ね うし とら う たつ、み ぱんだ、しろくま らいおん まんとひひ わに かえる」