無心

 深層心理を覗いたような気がしたが、そんなことはないと思えるから、深層心理もあてにはならないのかもしれない。
 僕は行ったことがないが、昨夜の僕の夢の舞台は競馬場だった。走る馬の雄姿を見るのかと思ったら、何故か分からないが、スタンドではなく、建物の外にいた。仕切られた大きな部屋は、テーブルなどで思い思いに缶コーヒーを飲むような設定だった。そこに僕がいた。そしてある男性もいた。その男性は、月の終り頃になると5000円貸してと言って来る。固い職業についていたのに酒と博打で全てを失った人だが、いまだ酒は止められないで、月末には金が底をつき、無心に来るのだ。最近酒を飲んで薬局の営業中に無心に来たから貸さなかったのだが、その後しらふでやってきた。謝っていたが、結局は無心なのだ。前回の酒を飲んでの乱入があったから「もう貸さない」と言うと、「そんなことを言われな」と珍しく強い口調で答えた。恐らくすぐにでも酒が飲みたかったのだろう。
 僕は幼馴染だし、2回彼が法務局に長期出張に行った経歴があろうが、結構気が合うから懇意にしているが、今までに聞いた事がない語調だった。吉本新喜劇も負けそうな面白い男性の意外な反応に驚いたが、それだけ余裕を失っているのだろう。その時の不可思議な彼の反応が、深層心理では危険な人物になっているのだろう、夢の中で結構恐怖を感じたから。
 目が覚めてからも、自分では判断しかねた。夢の中の彼が現実に近いのか、逆を連発する彼が近いのか。