謙遜

 なんと言う偶然だろう。或いは、何に導かれたのだろうと大袈裟に言っても自分の中では違和感はない。
 僕は初めて漢方相談に訪れた人には必ず身長と体重を聞く。インターネットとか電話相談が多いから、相手を直接見ることが出来ないことが多い。薬を作るとき、体格がいいのか、普通か、華奢なのかは大切な情報だ。ある数値を越える人には、大人の標準量の薬では薄過ぎて効かないし、逆の人には効きすぎる。だから体重は薬局には必須の情報だ。
 今日、ある患者さんの相談を受け、カルテに清書している時に、肥満度を計算機ではじき出した。いつもの作業なのだが、今日は計算機に表れた数字に目を見張った。何と、0,88888888888と8が続いていた。さすがにこの数字を見たら誰だって眼を見張るのではないか。11桁しかないからこの後何処まで8が続くのか分からないが、ひょっとしたら永遠に8が続くのではないかと思ったのだ。
 僕は薬剤師だけれど、元々は文系志望だけあって、この8の並びを不思議だとは考えずに、綺麗だと感じた。言い換えれば頭ではなく視覚で感じていた。きっとこの先も永遠に8が続くのかと思うと神秘的でもあった。そしてこのことをいつでも再現したくて、157cm 48kg、理想体重54kgを目もした。これで僕はいつでもこの8の永遠の行列を作ることが出来る。
 そして今このブログを書こうとして、さすがに少しは数学的な検証をしたほうがいいかなと思い考えてみた。考えるのは好きではないが、意外と簡単に8の行列の答えが見つかった。要は、割り算をしたときに、筆算でやるとよく分かるが、割った後の残りの数字が、一桁だけ下がって、割られる数字と一致すればいいのだ。具体的には48を54で割ると8あまり48になるのだ、それを又54でわるからまたまた8あまり48だ。これで永久に8が続くことになる。少し考えれば分かることだったが、仕事で唯でさえ少ない思考力のほとんどを使い果たし、これ以上頭を使いたくないのだ。
 こんな些細なことが美しく見えるのは、北海道で起こった地震がいつ何処で起こっても不思議ではない、明日はわが身と教えてくれたからだろうか。明日は来ないかもしれないと、気づかされたからだろうか。又一つ自然に対して謙遜になった。