足早に台風が去ってくれたおかげで、夕方には晴れ間も見えた。ついこの前まで7時に仕事を終えたらそのまますぐに中学校のテニスコートに出かけウォーキングをしていたのに、いまやもう真っ暗だ。ほんのわずかな間で日が暮れるのが早くなった。ウォーキングが出来る出来ないで時間を計っているから、季節の移り変わりの速さを感じる。
 街路灯がわずかに照らしてくれるから、中学校の駐車場をウォーキングすることにした。そこには何本かの大きな木があって、真っ暗な中でせみが一際大きな声で鳴いていた。僕にはそれは命を終える前の精一杯の声のような気がした。短い命を終えるセミ達の哀れを感じた。
 台風が落とした気温のおかげで、汗もかかず、気持ちのよい時間を過ごした。決して誰とも遭遇しない至福の時間だ。雨で落とし、風で吹き飛ばし、考えることをしないでいられる至福の時間だ。
 2階連続で台風の直撃を辛うじてまぬかれたのは、最早何かの計らいに感じる。運がよかった、運がよかった。やってくる人たちが多く口にする言葉だ。自分達だけが助かればいいという気持ちがあったら、その言葉は出ないと思う。明日はわが身、嘗て、そういう経験をした地域住民だから出る言葉だ。