経路

 前回の台風をまるでコピーしたかのように、同じ経路を通って台風がやってきている。今回の違いは、まだ南の海の上にいるはずなのに風が強いことだ。夕方から台風でしか経験できないような強い風が吹き始めた。なにやら大阪湾では今まで経験した中で一番の大潮に匹敵するくらいの高潮が予想されているらしい。大阪湾と牛窓は同じ瀬戸内海に面しているし近いから、牛窓も同じようなことが起こるのではないかと懸念している。
 そこで明日の朝は車を移動させておこうと思う。我が家の隣には、我が家とは関係ない駐車場がある。そこはこの辺りでは1メートル半くらい高い。薬局の前の駐車場までは水がきたことがあるが、そこより僕の薬局は1メートル高くて、我が家よりさらに1メートル高い。もしそこが高潮でやられたとしたら海抜3メートル近いところが高潮でやられたことになる。それはさすがに牛窓では歴史に残る高潮になってしまうからありえないだろう。
 ところで隣の駐車場は我が家のものではない。持ち主はある企業で、僕は断りをいれずに毎回使わせてもらっている。寛容な心の持ち主なのだろう、いまだ文句を言われたことがない。牛窓の人間はどうぞ大阪のほうに行ってくれと願い、大阪のほうの人間は、どうぞ名古屋あたりに行ってくれと頼み、名古屋の人はどうぞ東京に行ってくれと頼む。人間性が問われるが、怖いものは怖い。到底引き取ることは出来ない。台風は海水をかき混ぜるが、人の心もかき混ぜるみたいだ。