漢方

 「漢方って、そんなにいいんですか?」としみじみ尋ねたのは素人ではなくお医者さんだ。
 僕は医師のプライドを傷つけるから黙っていることを勧めたが、どうしても言いたかったのだろう。既に2種類の漢方薬も現代薬5種類の他に飲んでいるから、黙っていては当然処方されるからもったいないと思ったのだろう。医師に漢方薬岡山県の薬局で作ってもらっているからいらないと言ったらしい。普通ならその時点で医師の表情が変ってもよさそうなものだが、穏やかな表情で、もう病院からは漢方薬を出さないと言われたらしい。その後に出た言葉が冒頭の言葉だ。患者さんはよく効くと答えてくれたと思う。
 実際によく効いているのだ。まだ2週間しか飲んでいないのに、意欲低下で引きこもりがちになっていたのが、奥さんを車で送ってくれたりするようになった。今日はここ、明日はそこと日替わりで体調不良の場所が変り、いい日など一日もない。特に肛門付近の不快感を訴えるが、それを口に出さなくなった。それよりも何よりも僕が嬉しいのは、4kgも減った体重が元に戻りそうになったのだ。体重が増えるときは色々な病気が治るときだ。僕には一番嬉しい情報だった。
 気力も体力も失せ始めた老人に、安定剤や逆流性食道炎の薬を飲ませて何になるのだろう。ガンを早めるか、痴呆を早めるか、効かないだけならまだいいが、あの年齢の人にプロトンポンプインフィビターはダメだろう。衰えた人に石油から出来た薬を飲ませてどうする気だろう。やはり口にして上げるのは自然なものだろう。
 漢方薬が全てを網羅など出来ない。現代医学が中心中の中心だ。ただし、漢方薬でしか救えない病態もある。そうした人には「そんなにいいんです」